私立医学部の学費免除とは、成績優秀者は学費が免除されたり、返済不要の奨学金が支給されたりする制度のことです。
また、卒後に一定の条件を満たせば、学費が全額免除される私立医学部もあります。
私立医学部の学費免除を利用すれば、サラリーマン家庭でも私立医学部に通うことができるのです。
今回は、大学ごとに私立医学部の学費免除の内容を紹介させていただきます。
目次
私立医学部の学費免除で学費ゼロになる大学はある?
私立医学部の学費免除で学費がゼロになる大学は、防衛医科大学校と自治医科大学です。
防衛医科大学校は学費がゼロになるだけでなく、さらに毎月給料ももらえます。
しかし、どちらの大学も条件つきです。
※防衛医科大学校は、省庁大学ですが、学費がゼロになるので紹介します。
防衛医科大学校の学費免除
防衛医科大学校は学費免除により、学費がゼロになります。
防衛医科大学校の医学科学生の身分は、特別職国家公務員というものです。
そのため、アルバイトなどはできませんが、毎月113,300円が支給されます。
年2回のボーナスもあるし、学生寮での生活のため、生活費がかかりません。
学費はおろか、生活費もなしで、しかも、給料がもらえるという最高の待遇を受けることができます。
勉強をしているだけでお金をもらうことができるって素晴らしいですね。
医学科の身分
身分 特別職国家公務員 手当 学生手当:月額113,300円(平成29年4月1日現在) 期末手当 年2回(6月、12月) 償還金 卒業後勤務年限が9年を満たないで離職する場合は、卒業までの経費を償還しなければなりません。
しかし、防衛医科大学校の学費免除を受けるには条件があります。
卒後9年は自衛隊で医師として働かなくてはいけないのです。
学生寮での生活は規律もありますし、訓練もあるので、かなりつらいこともあるでしょう。
もし、途中で嫌になった場合、自衛隊としての勤務の期間に応じて、償還金として、それまでの学費をすべて返さなくてはいけなくなるのです。
平成25年3月の卒業生における償還金の最高額は、4,603万円だったとのこと。
体力に自信があって、卒後9年間自衛隊で働く覚悟がある人だけが防衛医科大学校に行くべきです。
中途半端な覚悟で入ると、大変なことになるでしょう。
Q もしも退職した場合どうなりますか?
A やむを得ぬ理由で、卒業後9年未満に自衛隊を離職する場合は、卒業までの経費を償還しなければなりません。償還金の額は隊員としての勤務期間によって決定されます。
例)平成25年3月の卒業生の償還金最高額4,603万円
自治医科大学の学費免除
自治医科大学は、学費免除によって6年間の学費2300万円がゼロになります。
しかし、自治医科大学の学費免除を受けるためには条件があります。
医学部卒業後、9年間は地元の知事が指定した病院に勤務する必要があるのです。
条件を満たせなかった場合は、2300万円に利子をのせた金額を一括返済しなければいけません。
2300万円を一括返済するのは不可能なので、なんとしてでも条件を満たすという覚悟が必要でしょう。
修学資金貸与制度
修学資金貸与制度とは、「自治医科大学医学部修学資金貸与規程」に基づき、入学者全員に必ず学生納付金相当額及び入学時学業準備費を貸与するもので、そのために、入学手続きの際、「修学資金貸与契約書」を提出し、本学との貸与契約を締結することになります。この制度により、入学金等の一時金は不要となります。
この修学資金は、大学を卒業後、直ちに、第1次試験の試験地の都道府県知事が指定する公立病院等に医師として勤務し、その勤務期間が修学資金の貸与を受けた期間の2分の3(1.5倍)に相当する期間(その勤務期間のうち2分の1は、知事が指定するへき地等の指定公立病院等に勤務する。)に達した場合は返還が免除されます。
但し、この条件を成就しなかった場合には、貸与金に所定の利率を乗じて得た額を加えて一括返還しなければならないことになっています。
出典:自治医科大学 修学資金
また、自治医科大学は全寮制ですが、寮費などの生活費がかかります。
人によりますが、交際費なども含めると月10万円は必要となるでしょう。
学費がゼロなので、これくらいならサラリーマン家庭でも問題ないはずです。
Q 生活費はどのくらいかかりますか?
A 寮費、食費、電気代などの光熱費などでおおよそ5~6万円です。これに、交通費、レジャー費などが個人によってかかります。
私立医学部の学費免除があれば普通の家庭でもギリギリ通える?
私立医学部の学費免除を利用すれば、親がサラリーマンでも私立医学部に入学可能です。
今回は学費免除を利用することで学費が2000万円以下になる私立医学部を厳選して紹介させていただきます。
学費が2000万円以下であれば、サラリーマン家庭でも何とか学費を工面することができるんです。
産業医科大学の学費免除
産業医科大学の学費免除を利用すると、6年間の学費が3049万円から1130万円に安くなります。
6年間で1130万円ならサラリーマン家庭でもギリギリ学費を支払うことができるのです。
しかし、産業医科大学の学費免除を受けるには条件があります。
卒後9年間、産業医等の仕事につかなければ学費を一括返済しなければいけないということです。
一括返済する金額は、1919万円以上となるので、現実的には無理でしょう。
確実に条件を満たす覚悟がある人だけが利用すべきだと思います。
医学部の学生を対象に、公益財団法人産業医学振興財団が修学資金として学生納入金の一部を貸与する制度です。
卒業後、貸与を受けた期間の1.5倍の期間(在学6年間にわたり貸与を受けた場合は9年間)産業医等の職務に就けば、貸与を受けた全額が返還免除となります。
但し卒業後、産業医等の職務に就かない場合、または所定期間勤務しない場合については、貸与を受けた全額を一括返還しなければなりません。なお、産業医学卒後修練課程もしくは大学院の終了後、「産業医等の職務に一定期間」就けば、産業医学卒後修練課程もしくは大学院の修学期間は、「産業医等の職務に就いていた」とみなされます。その合算9年により、全額返還免除の要件を充たすことができます(大学卒業から概ね9~11年)。
慶応義塾大学の学費免除
慶應義塾大学の学費免除を利用すると、6年間の学費2200万円が1400万円に安くなります。
6年間で1400万円ならサラリーマン家庭でも十分通うことが可能です。
奨学金をもらえるかどうかは入学時に分かるので、ダブル合格したときの判断材料にもなるでしょう。
ただ、学業不振の場合、打ち切られる可能性があるので、入学後も勉強は頑張ったほうが良いと思います。
慶應義塾大学医学部人材育成特別事業奨学金(合格時保証型)
この奨学金は、医学部独自の合格時保証型奨学金で、一般入学試験成績上位者10名程度に、第1~4学年の各年度継続的に1人あたり年間200万円(総額800万円)を給付する大型奨学金です。給付型の奨学金なので、返済の義務がありません。
~中略~
奨学金の採否が入学試験の成績で合格発表時に確定するため、慶應義塾大学医学部入学への大きな判断材料になります。
~中略~
※申請に際しては家計支持者の年収制限はありません。
※入学後の学業が不振の場合には給付が打ち切られることがあります。
※physician scientist の育成を目指す研究医養成プログラム(MD-PhDコース)選択者の場合、5・6年次に各年100万円(計200万円)が加わり、給付金額は上記奨学金と合わせて6年間で総額1,000万円となります。
国際医療福祉大学の学費免除
国際医療福祉大学の学費免除を利用すると、6年間の学費が1910万円から510万円に安くなるのです。
6年間の学費510万円というのは、ほぼ国立医学部の学費(350万円)と変わりません。
普通の家庭でも医学部に通うことができるでしょう。
しかし、国際医療福祉大学の学費免除を受けるには厳しい条件があります。
まず、一般入試で成績上位30名に入ることです。
さらに、入学後も成績上位50名に入り続ける必要があります。
入学定員は140名なので、上位3分の1に入らなくてはいけません。
国際医療福祉大学医学部自体の偏差値が高いので、優秀な学生が多い中で入学後も上位3分の1に入り続けるのはかなり大変なことでしょう。
部活をやる時間もないと思います。
医師を目指すみなさんの進学を経済的に支援することを目的として、「一般入試」において特に成績が優秀な合格者を医学部特待奨学生として選抜します。医学部特待奨学生には奨学金として最大6年間で1,400万円を給付します(ただし、奨学金は各年度の学生納付金に振り
替えます)。
医学部特待奨学生制度には特別な申請等は必要なく、本学医学部一般入試の受験者全員が選抜対象となります。◦医学部特待奨学生制度の詳細
特待奨学生を選抜する入試 対象者資格・人数 給付額 給付期間 一般入試 成績上位合格者
30名1年次:250万円
2~6年次:230万円(毎年次)6年間
(本学学則で定める修業年限)◦医学部特待奨学生の資格継続について
特待奨学生の奨学金給付期間は本学学則で定める修業年限とします。ただし、以下の項目のいずれかに該当した場合には、原則としてその後
の奨学金給付は行いません。
①留年した場合 *1
②転学科した場合
③本学学則で定める懲戒処分を受けた場合
④前年度の成績が不良の場合 *2
⑤その他、奨学金給付を継続することが適当でないと学長が判断した場合
*1 休学による留年を除く。
*2 前年度の学部内における成績順位が上位50位以内に入らなかった場合。
順天堂大学の学費免除
順天堂大学の学費免除を利用すれば、6年間の学費が2080万円から200万円にまで安くなります。
しかし、順天堂大学の学費免除の条件は厳しく、対象者数もわずかなので、あまり期待はできないでしょう。
入学後も上位3分の1以内の成績を維持しないと打ち切られる可能性があるので、入学後も気を抜くことができず大変だと思います。
学費減免制度 A特待生○対象者数 若干名
順天堂大学の学費免除には、以下のようなものもあります。
学費減免制度 B特待生
医学部入学試験において学力試験および人物識見が特に優秀な合格者に対し、初年度に限り授業料・施設設備費(計90万円)を免除する制度です。
○対象者数 若干名
東京慈恵会医科大学の学費免除
東京慈恵会医科大学の学費免除を利用すれば、6年間の学費が2280万円から1405万円まで安くなります。
ただし、東京慈恵会医科大学の学費免除には厳しい条件があります。
入学試験、入学後も成績上位5名を維持するということです。
入学後、成績上位5名に入り続けるのはほぼ無理だと思います。
なので、あまり期待しない方がいいでしょう。
・入学者のうち入学試験の成績上位5名を特待生とし、初年度の授業料の全額を免除します。
・2年次から、前年度の成績上位5名を特待生とし、当該年度の授業料の半額を免除します。
日本医科大学の学費免除
日本医科大学の学費免除を利用すると、6年間の学費が2200万円から1950万円になります。
ギリギリ学費を2000万円以下におさえることが可能になるのです。
日本医科大学の学費免除の条件は、以下の通り。
前期試験 入学試験上位者10名のうち入学した者
後期試験 入学試験上位者3名のうち入学した者
を特待生として、初年度授業料(250万円)を免除いたします。
その他の私立医学部の学費免除
他の私立医学部も学費免除がある大学はいくつかあります。
しかし、どの大学も元の学費が3000~5000万円と高額です。
なので、学費免除を受けても結局3000万円以上かかるという大学ばかりなのです。
3000万円以上の学費って普通の家庭では支払うのは、100%無理だと思います。
仮に無理して入学できたとしても、留年したりして、学費が払えないことで退学なんてこともよくある話です。
医学部にさえ入ってしまえばお金はなんとかなるなんて甘い考えは通用しません。
学費が払えない場合は、普通に退学になりますよ。
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なので、学費が3000万円以上する私立医学部には普通のご家庭の人が行くのはおすすめできません。
それだったら、もう1年浪人して国立医学部や学費の安い私立医学部を目指した方がいいですよ。
私立医学部の学費免除の代わりとなるものは?
私立医学部の学費免除の代わりになるものとしては、病院や自治体独自の奨学金があります。
しかし、学費免除とは違って、奨学金の場合は、卒後9年間僻地での勤務をしなければいけないなどの厳しい条件つきです。
条件を満たせなければ、2000万円以上の学費を一括返済しなければいけないという無茶な条件もあります。
実際の勤務地や働き方が自分に合うかもわからないのに、絶対にやめられない状況にあるというのは、精神的にかなりきついはずです。
なので、できるだけそういった奨学金は利用しないようにしたほうがいいですし、本当に最後の手段として考えておくことをおすすめします。
医学部入学試験において学力試験および人物識見が極めて優秀な合格者に対して減免する制度であり、6年間で最大1,880万円が減免されます。
減免額および減免条件は次のとおりです。