医学部の留年の実態について、現役医学部生が語ります。
医学部って入るのは難しいのは有名です。しかし、入ってから卒業して、医師国家試験に受かるのが難しいのはあまり知られていません。
数字上は、国試の合格率は90%以上となっているので、めちゃくちゃ簡単なテストのように思われます。
しかし、実は、国試の合格率が高いのは、医学部留年が多いからなのです。
今回は、医学部の留年をテーマにお話をさせていただきます。
目次
医学部の留年の実態は?多い大学では半分以上が留年している?
医学部は留年がめちゃくちゃ多いです。
実際私の所属する医学部でも5年生のうち、40~50%が留年生となっています。
しかも、2回、3回と留年を繰り返す人も少なくないのです。
3年生から留年を繰り返し、進級できずにせっかく医学部に入ったのに大学をやめていく人もいます。
また、厳しい医学部の生活に耐えかねて、体やメンタルを崩し、退学していった人を何人も見てきました。
国立大学だと弘前大学医学部が留年が1番多いといわれていて、卒業するまでに半分以上が留年するとのことです。
その次に進級が厳しいのが、旭川医科大学、山梨大学医学部、徳島大学医学部、鳥取大学医学部、島根大学医学部、宮崎大学医学部、琉球大学医学部で、40~50%が留年します。
一方、京都大学医学部、金沢大学医学部、浜松医科大学、名古屋大学医学部、三重大学医学部
、岡山大学医学部、愛媛大学医学部などは進級が緩いといわれていて、卒業までに留年するのはたったの15%以下とのことです。
国立医学部ですらこのありさまとなっています。
私立医学部の留年事情はもっと根が深いです。
以下の記事では、ストレートで卒業して国試に合格したのは3分の1だったとのこと。
「私の大学は同級生が120人いたのですが、1年目で20人ほどつぶれました(筆者注・留年のこと)。ストレートに6年間で卒業して、医師国家試験(国試)に合格できたのは40人ぐらいではないでしょうか。最終的に80人は国試に合格できると思いますが、他の人たちはいつの間にか転部して医学部から消えたり、卒業できずに放校されたりします」
私立医学部の留年の数は国立医学部よりもかなり多いと考えられるでしょう。
医学部留年で大学を退学になる人もいる?
医学部で留年して大学を放校になる人もいます。
医学部に入る学力があるのにもかかわらず、留年を繰り返して、せっかくの医師になる夢をあきらめざるをえない人がいるのです。
本当にかわいそうに思います。
個人的な意見としては、入試自体が医師にふさわしい能力を測定するフィルターとして機能しているはずです。
なので、わざわざ在学中のテストで何度も留年させるのはオカシイと思います。
また、医師としての能力は医師国家試験で担保されるわけです。
わざわざ大学在学中の臨床とは関係のない基礎医学の科目でふるいにかける必要はありません。
医学部に入って何度も留年を繰り返せば、現役で入っていたとしても、もう後戻りができない年齢になります。
医師不足といわれている世の中で何度も留年をさせて、退学に追い込むのはどうなのでしょうか。
ここからは、なぜ医学部で留年が多いのかの原因を考えてみたいと思います。
なぜ医学部は留年が多いのか?原因は?
医学部留年の原因① 学生の質の低下
医学部で留年が多い原因でもっとも考えられるのは、学生の質の低下です。
学生の質の低下の根本的原因は、医学部の定員が大幅に増加しているからだと考えられます。
子供の数は減っているのに、医学部の定員は増加しているのですから、学生の質が低下するのも当然です。
また、地域枠や推薦入試で医学部に入学する人が増えてきたことも一員となっています。
地域枠や推薦入試は、学力よりも地域に残って医師として働くかといったことが重視されるので、一般入試で入る人よりも学力が低いのです。
実際、私の所属する医学部でも地域枠などで入学した学生は留年率が高いといわれています。
留年が多い医学部をみてみても、偏差値の低い私立や国立大学が多いです。
なので、単純に学生の学力が低下したことが医学部で留年が増加している原因といえるでしょう。
関連記事 医学部定員の推移|医学部定員は10年で20%増加?
医学部留年の原因②医学部は1つの試験を落としたら即留年する
医学部留年の原因で次に考えられるのが、医学部は1つの試験を落としただけで留年するからです。
医学部は普通の大学と違って、科目を選ぶことができません。
およそ100人の同級生がまったく同じスケジュールですべての授業を履修する必要があるのです。
すべての授業が必修なので、一つでも単位を落とすと即留年します。
そのため、たった一つの授業を再履修するために、1年を無駄にした人が何人もいるのです。
もちろん、試験を落としても再試験があります。
しかし、その再試験に落ちたら、次の再試験があるかどうかは教授の気分次第なのです。
落とした人数が多ければ、再試験をするだろうし、少なければやりません。
それくらい教授の考え一つで留年が決まってしまうのです。
これは、かなりのストレスでした。
私はなんとかストレートで進級できていますが、留年しかかったことは何度もあります。
医学部留年の原因③医学生が学ぶ範囲が増加したから
医学部で学ぶ知識量は、ここ数年で何倍にも増加しています。
そのため、科目も増え、医学生にかかる負担も増加しているのです。
昔の医学部は出席を全然しなくて部活ばかりしていても、進級できたと先生はいいます。
今では、出席も厳しくなったので、毎回授業に行かなくてはいけません。
また、勉強する範囲が膨大になり、増加した科目のすべてに合格する必要があるのです。
あきらかに、医学生にかかる負担が昔よりも増大しています。
医学部で留年が増えても当然と言えるでしょう。
負担が増えたのならば、ある程度ハードルを下げればいいものの、そういった措置はありませんからね。
医学部留年の原因④大学教授1人の考えで留年を決定できるから
医学部の教授には、あまりにも客観的に見てあまりにも難しすぎる試験を作る人がいます。
他の大学や専門家、現役の医師に聞いても、解けない人がいるほどの難問です。
そんな問題を試験に出して、解けなかったら留年にする教授が実際にいます。
なぜなら、教授は大学組織のトップなので、誰も口出しできないのです。
おかしなことをしていても、それを止める仕組みがありません。
おそらくこういった教授はどの大学にも1人や2人がいるために、留年が異常に増えているのだと考えられます。
医学部留年の原因⑤医師になるべき倫理やモラルを覚えさせるため
医師は人の命を扱う職業なので、勉強のやる気がない人は医師にしてはいけないという考えをする人がいるのだと考えられます。
そういった思想を持つ教授は、問答無用で、学生を留年させるのでしょう。
もちろん、中には、勉強に対して、あまりにもやる気がない学生もいますし、学力が著しく低い人もいます。
しかし、試験が進級試験としてふさわしくないレベルの問題を作る先生がいるのも事実。
どちらが正しいかといったことはないのですが、どちらの要素もともに医学部の留年が多い原因となっていると考えられます。