昨今、職業全般において労働時間の長さが問題になっていますね。
その波は医療業界にもやってきているのです。
医師の世界でも高いQOL(quolity of life)を目指すことが求められるようになってきました。
では、医師でQOLが高い科はいったいどの診療科なのでしょうか?
目次
QOLとは?
QOLとは、quality of lifeの略語で、日本語では「生活の質」と訳されます。
つまり、「QOLを高める」とは、「人間が自分らしい生活を送り、人生の満足度を高める」ということを意味するのです。
元々は、がん患者に対して抗がん剤を使用することで激しく消耗し、生きる楽しみを見出せなくなった状態を「QOLの低下」などと呼ぶ形で使用されていました。
しかし、最近では、医療従事者が心身ともに疲弊してきたことで医療の世界が崩壊しつつあります。
そのため、一人ひとりの医療従事者のQOLを高めて持続可能な医療を目指そうという動きが出てきたのです。
では、医師においてQOLの高い科とはどんな科なのでしょうか?
QOLが高い科とはどんな科?
QOLが高い科を3つの条件から考察してみました。
今回は、宿直の回数、労働時間の長さ、復職、育児支援制度の有無などから診療科ごとにQOLの高さを比較してみたいと思います。
宿直の回数が少ない
宿直の回数が少ない科のランキングは以下のようになります。
診療科別宿直なしの勤務先の割合ランキング
1位 | 放射線科 | 59.6% |
2位 | 麻酔科 | 43.1% |
3位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 41.2% |
4位 | 内科 | 33.3% |
5位 | 整形外科 | 31.1% |
6位 | 産科・婦人科 | 29.9% |
7位 | 小児科 | 28.3% |
宿直が少ない診療科1位は放射線科です。
2位は麻酔科、3位は眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科などのマイナー科でした。
労働時間が短い
労働時間が短い科は以下のようになっています。
週当たり勤務時間60時間以上の常勤医師の割合が低いランキング
1位 | 精神科 | 27.5% |
2位 | 放射線科 | 28.5% |
3位 | その他(眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科など) | 31.2% |
4位 | 麻酔科 | 32.9% |
5位 | 内科系 | 39.9% |
出典:「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」平成28年度厚生労働科学特別研究
労働時間が短い診療科1位は精神科です。
2位は放射線科、3位はその他(眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科など)、4位は麻酔科、5位内科系となりました。
復職制度や育児支援制度が整っている
復職制度や育児支援制度が最も整備されているのは麻酔科です。
麻酔科は多様な働き方が許容される診療科といえるでしょう。
大学病院の麻酔科では、子育てしながら麻酔科医をつづけられるようなフレキシブルな勤務体系が採用されているところがたくさんあります。
一例を紹介すると以下の通りです。
他の科でも復職制度などを調べてみましたが、見つかりませんでした。
復職制度や育児支援制度がちゃんと整備されて機能しているのは麻酔科だけといえるかもしれません。
医師QOL高い科ランキング
宿直の回数、労働時間の長さ、復職、育児支援制度の有無などから医師でQOLの高い科を独自にランク付けさせていただきました。
女性医師やQOLの高い科に進みたいという若手医師の方の参考になれば幸いです。
1位 麻酔科
QOLが最も高い科は麻酔科で間違いありません。
理由は、麻酔科は当直がない勤務先が放射線科に次いで2番目に多く、労働時間が比較的少なく、さらに復職制度や育児支援制度が最も整備されている診療科だからです。
今回比較した3つの点において、バランスよくすべてでQOLが高くなっていたのは麻酔科だけでした。
フリーの麻酔科医の中には年収3000~4000万円稼ぐ人もいるほどなので、育児などのために仕事をセーブして働いてもかなりの高収入を維持できる点も魅力的だと思います。
実際に、女性医師の割合も39.6%と全診療科の中で5位とかなり女性が多い診療科です。
関連記事 女性医師多い科ランキングトップ10 1位は皮膚科?
出産や育児をするとどうしても医師としてのキャリアが一度途切れてしまうので、臨床に復帰しにくくなるのが問題とされていますが、臨床への復職制度などが整えられているからでしょう。
女性医師の方、QOLが高い科を探している方に最もおすすめの診療科です。
2位 放射線科
QOLが高い科2位は放射線科となります。
放射線科は宿直がない勤務先が最も多い診療科であり、労働時間が2番目に少ない診療科だからです。
しかし、放射線科医は、IVRなどのために血管撮影室に入る場合などにどうしても医師が被ばくする場合があります。
日本放射線科専門医会によると、以下のように放射線科医の被ばく量は問題がない程度です。
放射線科医師の被曝線量は、問題とならないほど少しです。放射線診療に従事する医師の安全を守るために、法律で線量限度を定めています。しかし、実際には、この限度値を女性医師が越えたという報告はありません。多くの放射線科医師は、年間1mSv(ミリシーベルト)にも満たない被曝線量です。この値は日本の国で生活していて自然界から受ける放射線量と同程度です
出典:日本放射線科専門医会
それでも、女性は妊娠、出産などのイベントがあるので子供への影響を考えるためかあまり女性医師は多くはありません。
男性医師でQOLが高い科がいいという方におすすめの診療科です。
3位 マイナー科(眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科など)
QOLが高い科3位は眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科などのマイナー科でした。
マイナー科は宿直がない勤務先が3番目に少なく、労働時間も3番目に少ない診療科となっています。
QOLが高いので、女性医師も多いです。
マイナー科の中でも女性医師の割合が特に多いのは皮膚科、眼科となっています。
今や皮膚科は54.3%、眼科は41.5%が女性医師です。
4位 精神科
QOLが高い診療科4位は精神科です。
精神科は最も労働時間が短い診療科となっています。
しかし、精神科はデータから当直が多い診療科ということになりましたので、QOLはやや低いと考えました。
労働時間は短いですが、精神疾患をもつ患者さんに接するのは精神力をけずるのではないかと思うので労働時間が短いかどうかはあまりQOLには関係しないかもしれません。
実際、以下の本によると精神科医の自殺率は、一般人の数倍だそうです。
5位 内科系
QOLが高い科5位は内科系です。
内科系は、宿直の回数は4番目に少なく、労働時間は5番目に少なくなっています。
内科といっても、呼吸器・アレルギー内科、リウマチ・膠原病内科、腎臓内科、消化器内科、血液内科、循環器内科、腫瘍内科、感染症内科、内分泌代謝内科、神経内科と細分化されているので、科によってQOLの高さは変化するでしょう。
ちなみに、内科系の中で女性医師が最も多いのは、内分泌代謝内科です。
内分泌代謝内科における女性医師の割合は35.8%となっています。
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おそらく内分泌代謝内科は内科系の中でQOLが比較的高めなのではないでしょうか。