精神科医は自殺率が高い?
噂なのか本当なのか疑問に思い調べてみました。
参考書籍はこちらです。
精神科医だからこそ知っている裏話や日本の精神医療の問題点がたくさん書かれていて興味深いでしょう。
目次
精神科医は一般人の5倍自殺率が高い
精神科医は一般人の5倍自殺率が高いというデータがあります。
根拠は「精神科医はなぜ心を病むのか」という書籍に以下のように書いていました。
「精神科医が自殺する頻度は、一般人の五倍。さらに、研修医などの若手時代には、その頻度は一般人の九倍にもなる・・・・・・」
この数字は、アメリカで最も権威ある精神医学雑誌の一つである「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー」(1982年11月号)の掲載論文にきさいされたものだ。
引用元:精神科医はなぜ心を病むのか p4
同書籍には、以下のような記述もあります。
「この論文では、精神科医の自殺は、あらゆる医療関係者のなかで「圧倒的に」トップであり、自殺率はずっと同じ割合で推移している
引用元:精神科医はなぜ心を病むのか p4
他にも同様のデータがあります。
米国医学会と米国精神医学会が一九八七年に行った合同調査でも、全診療科の医師や看護師などすべての専門的な医療職のなかで、精神科医の自殺率が最も高いことがわかっている。さらにこの調査で、自殺した精神科医の家族に尋ねたところ、自殺した精神科医の五六パーセントは、自分自身に対して抗うつ薬などの精神科薬を処方し、四二パーセントの医師は、自殺当時、専門家の治療を受けていたという。
(中略)
また、やはり「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー」(二〇〇四年一二月)には、アメリカ人医師の自殺率が一般人の二倍近くに達し、診療科医別では精神科医が麻酔科医に次いで自殺率が高いという研究論文が掲載された。引用元:精神科医はなぜ心を病むのか p4
このように、アメリカでは精神科医の自殺率が高いという研究がたくさんされているのです。
いったい、なぜ精神科医は医療関係者の中でも自殺率が高いのでしょうか?
いくつかの仮説や可能性を考えてみました。
精神科医は自殺率が高い理由は?なぜなのか?
精神科医が一般人の5倍自殺率が高いというデータがありましたが、理由をいくつか考えてみました。
1. 患者の治療がうまくいかないために悩む
精神医療にはまだわかっていないことも多く、薬を飲んだから患者さんが元気になって病気が治るということはありません。
長い間病院に通い続ける患者さんも少なくないのです。
また、精神疾患には、病気を決定づける客観的なデータがありません。
内科だったら、X線やCTで異常な陰影が見つかれば何らかの病気があると診断することができます。
しかし、精神科医ではそういった明確な検査がないのです。
そのため、精神疾患であるかどうか自体の判断も曖昧になっています。
そんな状況ですから、治療効果を判定するのも難しく治療法に自信を持っている医師も少ないのです。
でも、医師になるくらいですから患者さんの役に立ちたいという思いを持っているわけで、治したいが治らないという葛藤に苦しまされるのではないかと思います。
2. 薬の使用に対して抵抗が少ない?
先ほど紹介したデータでは、精神科医の自殺率は麻酔科医の次に高くなっていました。
この2つの診療科に共通するのは、普段から精神に作用する薬を使っていることです。
麻酔科では医療用麻薬をしようしていますし、精神科では抗精神病薬を使っています。
普段から薬が身近にあり、患者さんに投薬しているわけですから、薬を服用すること自体へのハードルが下がると考えられるのです。
医師は激務でストレスもたまる仕事ですから、そういった薬を使ってしまう医師が出て来てしまうのだと思います。
そして、次第に服用量が増えていって最悪の結果になってしまうのでしょう。
3. 精神疾患になりやすい人が多い?
精神科には、もともと精神疾患を患ったことのある人が集まってくるという可能性が考えられます。
人間って自分がかかったことのある病気について詳しく知りたいものなんです。
私も咳が長引いたときに咳についてばっかり調べていたことがあります。
なので、もともと精神疾患だった人や精神疾患を持っている人は、精神科医になる人が多いのだと考えられるのです。
また、医師の診療科って科ごとにいる人の性格が全然違います。
外科系はスポーツマンタイプが多いし、内科はコツコツと勉強するのが得意なタイプが多いというように、診療科の特性ごとに集まる人の性格に偏りがあるのです。
もしかしたら精神科には真面目な人が集まりやすく精神疾患になりやすい人が集まるのかもしれません。(あくまで仮説です。)
4. 患者の感情巻き込まれて苦しむので、うつ病になる?
精神科では、患者さんの感情に巻き込まれることがよくあります。
「巻き込まれる」とは、患者さんのつらい体験に自分を重ねてしまい、相手の人生に本気で同情してしまうことです。
精神科医は、一日に何十人もの患者さんのお話を聞きます。
しかも、どれも重たい話ばかりです。
医師なので、患者さんを助けたいと思うのは当然ですが、すべての患者さんのつらい心に共感していては自分の心が持ちません。
患者さんから一歩さがったところから対応することで巻き込まれないようにしなくてはいけないのです。
少し抽象的ですが、以下のサイトが巻き込まれるということについて言及されているので、一読の価値があると思います。少し引用しました。
相手への気持ちが「暖かい」ぐらいならいいけれど、「熱く」なりはじめたら、要注意です。どこかでナルシズムが高揚してきている可能性が高い。患者さんと一緒に悲しんでいるうちはいいけれど、悲しみが深くなって、勝手に涙がこぼれはじめたら危ない、と考えてください。
要するに、「相手の人生を自分の人生として同情する」というのは、すでにアウトなんです。その人の人生に共感し、同情するのはいいけれど、自分の人生に同情してはいけません。
5. 精神科医の仕事はハードである
精神科医は労働時間的には他の診療科よりも短いというデータがあります。
しかし、質的にハードなのです。
どういうことかというと、内科や外科などの患者さんは高齢者が多く、ほとんどは紳士的で礼節をわきまえた良い患者さんだと思います。
しかし、精神科医には、薬物依存症であったり、攻撃的な患者さんだったりとさまざまな患者さんが来られるのです。
労働時間は短くても心は安らぐことはないのではないでしょうか?
精神科医はストレスが多いからなのかわかりませんが、一般の医師より平均寿命が五年短いといわれています。
じつは精神科医の平均寿命は一般の医師より五年短いといわれているが、アルコールに依存する精神科医がおおいこともその背景の一つとさえ考えられている
引用元:精神科医はなぜ心を病むのか p22
まとめ
精神科医の実情について詳しく知りたい方は以下の本を必ず読むべきです。
ネットからでは出てこない情報がたくさん書かれていました。
精神科医になることを考えている人は必ず目を通しておきましょう。