医師が何科になるかを決めるのは医師人生において最も大きな決断だと思います。
何科にいくかで年収やQOL、やりがいなどのすべてが全然違う結果となるでしょう。
楽な科にいくと、やりがいを感じられずに後悔する場合もありますし、かといって忙しい科に行くと自分の時間がとれずに後悔することがあるかもしれません。
正直医師が何科になるかを決めるには自分の人生で何を重要視するかということを決定する必要があるのです。
そのため、何科にいくべきかというのは難しく、中々決まりません。
今回は、何科の医師になるかを決める判断基準をいくつか紹介したいと思います。
何科の医師になるかを悩んでいる研修医や医学生の参考になればうれしいです。
目次
1.QOLで科を決める
QOLの高い科を選ぶというのも全然ありだと思います。
最近は勤務医の過重労働が問題になっていますからね。
医師として働くこと自体が幸せであり他に家族と過ごす時間などが必要でないという考えの方でしたら問題ないでしょうが、家族と過ごす時間を大切にしたい医師の方でしたらQOLが高い科を選ぶべきだと思います。
無視して忙しい科にいって心身共に疲れてしまっては意味がないですからね。
また、女性医師の場合、出産、育児などで医師としてのキャリアが途切れてしまい臨床に復帰しにくいという問題が生じる可能性があります。
女性医師の場合は、復職や育児支援の制度が整った麻酔科を選ぶというのもおすすめです。
2.年収が高い科にいく
医師は診療科によって年収が全然違います。
単純に年収が高い診療科を選ぶのもいいでしょう。
お金はあって損はないですからね。
ただ、年収だけを基準に何科になるか決めるのはよくありません。
例えば、年収が高いからと言って美容整形外科へ行くという感じですね。
診療科というのは普通は一生従事することになるので、本当に自分が興味があって一生続けられる覚悟がないと後々必ず後悔します。
あくまでも年収が高いというのは一つの参考データにすべきでしょう。
人生お金だけがすべてではありませんからね。
年収900万円を超えると幸せ度は上がらないと言われているように、際限なくお金を稼いでも幸せになれるわけではないのです。
医師をしていたら年収900万円は確実に超えることができるので、年収はあくまでも参考にする程度にした方がいいのかもしれません。
参考記事 これを超えると不幸になるらしい「年収900万円=最大幸福」説は本当か?
3.将来性が高い科に決める
何科になるか決めるのに、将来性が高い科を選ぶというのもおすすめです。
今の時代、医師は需要が多いので仕事につけないということはありません。
しかし、弁護士などのようにいつ制度の変化や状況の変化で食えなくなるということがないとも限りません。
診療科の将来性を考える上で重要な視点は3つあります。
・対象となる世代の人口の変化
・診療科にかかる患者数
・人工知能(AI)などの技術革新で代替されないか
まず、これから子供が減っていくといわれている状況では小児科の需要は減っていくと考えられます。
一方、例えば高齢者の人口は増え続けていて、糖尿病の患者数が増加しているので内分泌代謝内科の重要性はますます増えていくでしょう。
人工知能などにより画像診断が代替されていくという可能性を考えると放射線科医の需要は長期的には減少するという意見もあります。
このように、将来性から診療科を選ぶという視点は一生医師を続けていくために必要な視点でしょう。
4.自分が興味がある科にいく
個人的に何科になるかを決める上で、「自分が興味がある科にいく」のが最もおすすめです。
やはり年収やQOLよりも「やりがい」というものが医師という仕事を続けていく上でもっとも大きな原動力になると思います。
数百万円年収が安くても患者さんが元気になって笑顔で「ありがとう」といってもらえる診療科で仕事をした方が人生の充実度は高いでしょう。
周りに左右されずに、自分の考えで診療科は選んだ方が絶対に良いと思います。
5.やりがいのある科に決める
科によってやりがいは全然違うでしょう。
やはりちょっとした疾患を扱う診療科よりも命にかかわる診療科の方が疾患を治療して患者さんが元気になったときに感じるやりがいは大きいはずです。
また、簡単なことをしている科よりも難しいことをしている科の方が医師の中でも尊敬されます。
循環器外科や脳神経外科なんかは医師の中でも花形の科であり、尊敬される科ではないでしょうか。
6.社会的に求められている科に決める
腫瘍内科医や感染症内科医は欧米では一般的ですが、日本ではまだまだ医師が少ないのが現状です。
腫瘍内科や感染症内科は、今後人数が増えていくべき領域であり、社会的に求められている科といえるでしょう。
また、医療費が高騰している中で総合診療科も求められている科です。
臓器横断的に患者さんを診ることができる総合診療科の役割は大きくなってくると思います。
総合診療医となり、へき地で医療を提供すれば多くの人のために役立つことができるでしょう。
7.親の診療所と同じ科にいく
医師になる人には、親が医師であるという人が少なくありません。
将来的には親の医院を継ぐことになる人も多いでしょう。
すると、やはり親が開業している人は親と同じ診療科にいくのがベストになります。
親が医院を開業していると開業の初期費用がかからないし、患者さんもすでにいるので失敗するリスクがないのが魅力的です。
後から、転科をするというのは科によっては現実的に無理ですから最初から親と同じ診療科を選ぶというのが無難でしょう。
8.訴訟リスクが低い科を選ぶ
医師になって一番避けたいのが訴訟ではないでしょうか。
訴訟になれば信じられないくらいの時間がとられるだけでなく、心身ともに疲弊してしまいます。
なので、何科になるかを決めるのに訴訟リスクが低い科を選ぶというのも悪くはないでしょう。
ちなみに、訴訟リスクが高い診療科ランキングは以下のようになります。
1位から4位はすべて外科系です。
意外と精神科の訴訟リスクが高くなっています。
訴訟リスクが高い診療科ランキング
順位 | 診療科目 | 医師1000人あたり訴訟件数 |
1位 | 形成外科 | 7.1 |
2位 | 産婦人科 | 4.8 |
3位 | 外科 | 4.1 |
4位 | 整形外科 | 3.4 |
5位 | 精神科(神経科) | 2.0 |
6位 | 内科 | 1.9 |
7位 | 耳鼻咽喉科 | 1.5 |
8位 | 泌尿器科 | 1.3 |
9位 | 眼科 | 1.1 |
10位 | 皮膚科 | 1.0 |
11位 | 麻酔科 | 0.6 |
12位 | 小児科 | 0.3 |
出典:医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数 平成28年
9.診療科の先輩医師の人柄や人で選ぶ
何科になるか決めるのに迷っている人は、一緒に働くことになる先輩医師で選ぶのはどうでしょうか。
入局すると教授や先輩医師にいろいろと教えてもらうことになります。
一緒に働く人と合うかどうかは快適に仕事ができるかにめちゃくちゃ影響します。
科の雰囲気も大事ですね。
文化系の性格なのに、オラオラで体育会系の診療科に入ってしまうと結構きついと思います。
自分の性格に合った人や雰囲気の診療科がどこかというのをポリクリや研修医のときに注意深く観察しておくことが大切だと思います。